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呼吸トレーニング

2019/01/11
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人は加齢とともに、身体のあちこちが衰えてくるもの。呼吸機能も例外でなく、還暦を過ぎたあたりから「このままじゃちょっとマズイよというレベル」になる人が増えてくると言うのは、東京有明医療大学の学長を務める本間生夫医学博士だ。 「マズイよというレベル」とは、ふだんから息苦しさや呼吸のしづらさを自覚する状態。これが、慢性閉塞性肺疾患にまで悪化すると、呼吸困難に近いほどの苦しさに見舞われる。この疾患の罹患者は、国内で約530万人というから他人事ではない。 ただし、呼吸機能はいったん衰えはじめたら不可逆的に進行するわけではない。要となる胸の呼吸筋を鍛えることで、健康寿命を大幅に延ばすことができると、本間博士は著書の『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎)で力説している。 では、呼吸筋はどうやって鍛えられるのであろうか? 本間博士は本書の中で、ふだんの生活の中で励行すべき5つのポイントと、より具体的で効果の大きいメソッドを幾つか挙げている。以下、かいつまんで紹介しよう。 ■呼吸筋の力を向上させる5つのポイント 本間博士は、呼吸筋の鍛え方として「その生活習慣を日々積み重ねていたら、いつの間にかだいぶ力が鍛えられていた」という、自然体の習慣づけがベストだとしている。その生活習慣はいろいろあるが、絞り込むと以下の5つに集約されるという。 ・胸を張り、背筋を伸ばして姿勢をよくする ・呼吸筋をやわらかくするストレッチを行う ・長く声を出したり、声を出して歌ったりする ・息を吐ききるトレーニングをする ・有酸素運動や持久運動を行う(主にウォーキング) ほとんどは説明不要なほどわかりやすいが、2つめのストレッチはピンとこないと思う。これは立位の状態で、鼻からゆっくり息を吸い、口からゆっくり息を吐くサイクルを繰り返しながら、両肩を上げ下げしたり、首を横に傾けるといった動作をするもの。方法を解説すると長くなりすぎるので割愛するが、これ以外は、今からすぐにでも実践できる習慣だ。また、「息を吐ききるトレーニング」があるのは、息を吐いたときに肺に残る空気の量(機能的残気量)を減らすため。加齢によってこの量は増えてくるので、吐ききる習慣は重要になる。 ■スポーツ吹き矢 上記の習慣を応用したものとして、「呼吸機能を大きく引き上げるメニュー」が幾つかあるが、その1つが、シニアを中心に流行しているスポーツ吹き矢だ。本間博士は、これが呼吸機能改善に良い理由を、以下のように述べている。 「この吹き矢、『息を吐ききる力』をつけるにはもってこいなのです。遠く離れた的を狙って勢いよく息を吹いて矢を放つわけですから、肺活量が鍛えられないわけがありません。それに、的に命中させようと神経を研ぎ澄ますプロセスは、集中力を養うことにつながりますし、的に的中したときのよろこびや達成感は、日々のストレスを解消させることにもつながります」(本書141pより) スポーツ吹き矢は、全国各地のカルチャーセンターなどで体験できるので、興味がわいたら一度その門を叩いてみるとよいだろう。また、同じような効果があるということで、果物の種飛ばし競争に参加することも勧められている。 ■息を「吹く」楽器 肺から息を吐ききるトレーニングの一環として、吹いて音を出す吹奏楽器に親しむのもよいという。この利点は、スポーツ吹き矢と違って自室でいつでも行えること。トランペットやサックスのような本格的な吹奏楽器でなくてよく(そもそも肺の弱った人には不向き)、オカリナやハーモニカのような、値段も手ごろで手軽に取り組めるものでよいという。 ■日本語の名文を音読 本間博士は、七五調の名文を声に出して読むことが「呼吸のトレーニングとしてもたいへんおすすめ」と述べている。このリズムの文章は、「日本人の呼吸に合っている」というのが1つの理由として挙げられている。 また、大きく長く声を出す詩吟、謡、お経を唱えるのも、呼吸筋の鍛錬になるそうだ。 *  *  * 日本人の平均寿命は延びたが、健康寿命はこれより10年は短いという問題が指摘されて久しい。それに対し本間博士は、「呼吸トレーニングをしていけば健康寿命を10年は引き延ばすことができる」、つまり自身に与えられた寿命を生ききることができるという。ストレッチ以外はハードルが低く、効果は折り紙つきなので、生活習慣として呼吸トレーニングをやってみるとよいだろう